
Gemini Omni 1.1 Flashは、Google DeepMindが2026年8月27日に公開したAI動画モデルのアップデートです。テキスト、画像、動画を入力して高解像度の動画を出力するany-to-anyという考え方はGemini Omni Flashと同じで、そこに制作現場向けの4つの機能が加わりました。クリップを最大40秒までつなげるシーン延長、最初と最後のフレーム制御、キャラクターの一貫性を保つ動画参照、そしてドラフトからアップスケールするワークフローです。
費用は、無料ティアのないGemini APIの有料ティアのままです。動画出力は100万トークンあたり17.50ドルで、720p動画1秒あたり約0.10ドルになり、360pのドラフトはその約3分の1です。ローンチパートナーにはAdobe Firefly、Figma Weave、Runwayが含まれます。
高機能な動画ツールで、同クラスでは有力な選択肢のひとつです。ただし素のモデル基盤であり、仕事を最初から最後までこなす人材ではありません。私はeeselでAIチームメイトを作っていますが、正直なところ、動画モデルが良くなってもサポートチケットには答えてくれませんし、ブログも公開してくれません。それが本当に必要な仕事なら、自分で組み込むモデルより、eeselのようにすぐ働けるチームメイトのほうが適しています。
Gemini Omni 1.1 Flashとは何か
Gemini Omniは、Googleの「any-to-any」型の生成メディアモデルのファミリーで、Omni Flashはその中で高速かつ動画に特化したモデルです。Google自身の製品ページは端的に言っています。Gemini Omniは動画版のNano Bananaのようなもので、編集のたびに前の結果を土台にするため、シーンの一貫性が保たれます。プロンプト、画像、既存のクリップを渡すと、音声付きの高解像度動画が返ってきます。それを毎回ゼロから再レンダリングするのではなく、会話しながら仕上げていきます。
1.1のリリースは、Google DeepMindのプロダクトマネージャーAnish NangiaとAlisa Fortinが発表し、"a production-ready update for developers that offers improved control over generative video"と位置づけられています。キーワードは制御で、これがアップデート全体のテーマです。最初のOmni Flashは生成と編集ができることを示しましたが、1.1は開発者が思い通りに演出するための手段を与えるものです。APIで公開されているモデルIDはgemini-omni-1.1-flashです。
1.1の新機能
元のGemini Omni Flashをすでにご存じなら、変更点の要約は次のとおりです。4つの機能が同時に加わり、それぞれが最初のモデルを実際の制作パイプラインで使えなかった具体的な弱点に対応しています。

最大40秒までのシーン延長
元のモデルはどのクリップも10秒が上限で、物語を語ろうとすると厳しい壁でした。シーン延長では、既存の動画を取り、終わった地点から映像を続けて生成できます。10秒ずつ増やし、累計で最大40秒までです。Googleによると、延長では視覚的な一貫性と物語の流れが改善されており、ショットは目立つつなぎ目なく続いたり、別の方向へ分岐したりできます。

内部では、モデルの会話型編集と同じステートフルな方式を使います。"Continue the scene"のような入力とともにprevious_interaction_idに新しいリクエストをつなげると、映像を再アップロードしなくても、モデルがセッションの文脈を保持します。
最初と最後のフレーム制御
制作チームがまず気づくのはこの機能でしょう。ショットの開始フレームと終了フレームを指定でき、Omni 1.1がその2つのキーフレーム間をつなぐ連続した動画を生成します。Googleは、複雑なカメラの周回、ズーム遷移、シームレスなループクリップに最適だとしています。実際には、「動画を生成してカメラがうまく動くのを祈る」から、「ショットの始まりと終わりを決めて、間の動きはモデルに任せる」に変わるので、はるかに演出しやすくなります。
一貫性のための動画参照
キャラクターやスタイルのぶれは、AI動画のひそかな弱点でした。Omni 1.1では、新しいシーンを作る際に最大3秒の動画を参照でき、モデルが視覚的な文脈を保持してショット間でキャラクターの一貫性を維持できます。Googleのデモでは、アップロードしたダンスの参照クリップに用意したキャラクターを差し替えつつ、シーンの切り替えなしの1つの連続ショットを保ちました。以前は手作業での修正が大量に必要だった種類の連続性です。
ドラフトからアップスケール
最後の追加機能は、予算を気にする人にとって最も実用的です。360pの軽量プレビューを生成でき、Googleはこれを標準の720pより最大60%高速で、コストは3分の1だと説明しています。最終出力は1080pまたは4Kにアップスケールします。ラフカットは安く速く繰り返し試し、本番の計算コストは残すと決めたバージョンにだけ使う、という考え方です。

Googleは、これらの制御を使った3つのサンプルアプリを紹介しました。最初と最後のフレームを使うTransition Studio、カメラワーク向けの不動産Listing Walk-In、360pのバリエーションを3~4本並べて比較できるDraft Roomです。このモデルが力を発揮するのは、単発のクリップではなく制作ツールだということがよくわかります。
どこで使えるか
Omni 1.1は初日から複数のサーフェスで提供されました。Googleがこれをデモではなく制作用の基盤として扱ってほしいと考えていることがわかります。
- Google AI Studio:Gemini APIで直接試せます。
- Gemini Enterprise Agent Platform:Agent Platform APIで構築する企業向けです。
- Google Flow:Google AI Plus、Pro、Ultraの全世界の加入者が利用できます。
- Geminiアプリ:同じ加入者向けに、特にシーン延長が利用可能です。
技術仕様については、Google Cloudのドキュメントに、入力コンテキスト131,072トークン、出力57,920トークン、1回の生成リクエストあたり最大10秒(シーン延長がこれをつなげます)、1プロンプトあたり最大3本の動画、アスペクト比16:9と9:16、360pから4Kまでの解像度が記載されています。生成された動画には、出所を示すC2PA Content Credentialsが付与されます。
Gemini Omni 1.1 Flashの料金
課金モデルは最初のリリースから変わっておらず、重要な点も同じです。無料ティアはありません。最初のクリップから、生成する1秒ごとに料金がかかります。現在のGemini API有料ティアの料金は次のとおりです。
| 項目 | 無料ティア | 有料ティア(100万トークンあたり) |
|---|---|---|
| 入力(テキスト / 画像 / 動画 / 音声) | 利用不可 | $1.50 |
| テキスト出力 | 利用不可 | $9.00 |
| 動画出力 | 利用不可 | $17.50 |
| Google製品の改善に使われるデータ | 該当なし | いいえ |
コストの中心は動画です。Googleは動画出力を、720p動画1秒あたり5,792トークンの固定レートで課金します。100万トークンあたり17.50ドルなので、実効レートは1秒あたり約0.10ドルです。動画出力のみの目安は次のとおりです。
- 5秒の720pクリップで約0.50ドル
- 10秒いっぱいの720pクリップで約1.00ドル
- 360pのドラフトは1秒あたり約0.03ドル(Google自身の数値で、720pレートの約3分の1)
最後の行が、1.1の料金体系の核心です。360pのドラフトなら、40秒のシーケンスを数セントでプロトタイプでき、4Kにアップスケールする1テイクにだけ通常料金を払えば済みます。確定する前に何度も試すチームが報われる、理にかなった構造です。Googleは解像度ごとの詳細な料金をローンチ記事の料金表で公開しています。機械可読のAPIページでは、課金は上記の720pトークンレートが基準になっています。詳しいコスト計算と具体例は、Gemini Omni Flashの料金ガイドで解説しています。
なお、このモデルにはGemini 3.5 Flashと違ってBatch、Flex、Priorityのティアがなく、頼れるバッチ割引も公表されていません。Googleのモデル料金の全体像を知りたい場合は、一般向けプランとAPIプランを並べて紹介しているGeminiの料金ガイドをご覧ください。
開発者やパートナーの声
Omniファミリーが最初に開発者向けに公開されたとき、Google自身のAIリードであるLogan Kilpatrickが、その売りをこう要約しました。
"Omni Flash is SOTA at video editing at $0.10 / sec, same as Veo 3.1 Fast!"
より参考になったのは、独立系のAIニュースアカウントRohan Paulの見方で、本当のプロダクトの形は単一のモデルではなく、モデルをつなげることだと指摘しました。
"Chaining both models is the real product shape, not either model alone. Nano Banana 2 Lite makes reference images, then Gemini Omni Flash animates them."
1.1については、Googleはモデルを本番で運用しているローンチパートナーの声を前面に出しました。Figma WeaveのクリエイティブディレクターItay Schiffは、新しい制御が向かう方向を指摘しました。
"With extensions, richer reference material, and 4K resolution, Gemini Omni Flash takes teams beyond generating videos to truly directing them."
これらはGoogleが紹介に選んだパートナーの発言なので、中立的なレビューではなくローンチ時の見せ方として読んでください。独立した見方はHacker Newsのローンチスレッド(296ポイント、233コメント)にあり、こちらはより賛否が分かれます。開発者のcube00は、目玉である360pドラフトの発想に異を唱えました。
"While it sounds great you're quickly disappointed after you run the same prompt at standard resolution only to get a different result because it's non deterministic."
もっともな指摘です。ドラフトがプレビューとして役立つのは最終レンダリングが実際に一致する場合だけですが、生成は決定論的ではありません。戦略面では、Simon Willisonは今回のリリースを、Googleがどこに賭けているかを示すシグナルと読みました。
"Interesting that OpenAI abandoned Sora entirely but Google are continuing to invest heavily in their own video generation. Maybe because they see video generation as key to developing 'world models'?"
スレッド全体のバランスの取れた見方は次のとおりです。360pのドラフトは賢いコスト調整の手段であり、シーン延長は長いクリップではまだ多少のぶれが出ます。そして、派手な単発生成の競合よりも、Googleのエンドツーエンドの価値(モデルとFlowの組み合わせ)が評価されています。
Gemini Omni 1.1 Flashが向いている場面、向いていない場面
これは、このモデルを売る側ではなくAIプロダクトを作る側からの率直な見方です。Omni 1.1は本来の用途で優れています。自分で構築するパイプラインの中で、本格的な演出制御を使って動画を生成・編集することです。クリエイティブツール、マーケティング動画機能、あるいは動画そのものがプロダクトであるものを作るなら、現時点で最も有力な選択肢のひとつで、ドラフトからアップスケールする料金体系のおかげで試行も手頃です。
一方で、仕事をこなす働き手ではありません。モデル、つまり基盤です。周りのアプリを作り、いつ呼び出すかを決め、出力を処理し、実際に届けたいものにつなぎ込むのは自分です。動画機能を作る開発者ならそれで正しいトレードオフです。タスクを最初から最後まで任せたいなら、見方が違います。
私は日々、その線の反対側で仕事をしています。eeselでは、モデルを売るのではなく、決まった仕事のために採用するAIチームメイトを提供しています。それぞれが役割に必要なスキル、連携、会社の文脈を備えて来るので、組み立てるパイプラインはありません。現在のラインアップは、既存のサポートキューに加わるAIヘルプデスクエージェントと、リサーチして下書きを書くAIブログライターです。新しい動画モデルは、デモ映像がどれほど良くても、サポートチケットに答えたり記事を公開したりはしません。仕事が違えば、道具も違います。
ここでGoogleのラインアップ全体を比較しているなら、Gemini代替ツールのまとめ、Google Gemini 3の概要、Gemini 3の料金の内訳が、テキストと推論向けのモデルを扱っています。同じファミリーの画像側では、Nano Banana ProとNano Banana 2のレビューがおすすめで、GeminiとPerplexityの比較ではAI検索の観点を扱っています。
動画モデルにはできない仕事に、eeselを試す
チームの時間を本当に節約できるAIの使いどころを探してここに来て、正直な答えが「動画ではない」だったなら、それが役に立つ収穫です。eeselは、すぐ働けるAIチームメイトを実際の業務に配置します。AIヘルプデスクエージェントは過去のチケットとヘルプセンターから学び、すでに使っているツールの中で一次対応の質問を解決します。AIブログライターは、あなた自身の知識をブランドに沿った公開コンテンツに変えます。

Omni 1.1のような素のモデルとの違いは、構築するものが何もないことです。ソースをつなぎ、本番稼働の前に実際の過去データでチームメイトをシミュレーションし、オンにするだけです。無料で試せますし、数分で自分のコンテンツ上での動作を確認できます。